当時、俺のオヤジは土木関係の仕事をしていて、ある夏の日の仕事帰りに大きな♂のカブトムシをみやげに持ってきてくれたのだ。
「これがカブトムシかぁ・・」 保育園児の俺ははじめて見るカブトムシの雄姿に興奮した。
ところが、出会って数分後、近所に住む後輩のガキが俺のカブトムシの角をふんずけやがった。
角がポキッと折れてしまったのである。
「うぇ〜ん！」
俺の絶叫が響き渡った・・。
後輩のおふくろさんはしきりに俺のオフクロにあやまっていたが、俺の絶叫はしばらく止まらなかった。
さて、その後俺が何をしたかと言うと、何とセメダインで角をくっつけるという行為に及んだのである。
保育園のガキのくせに我ながら賢いではないか。（どこが！）
しかし、セメダインの角は少し触っただけですぐとれてしまい、一日中くっつけてはとれ、とれてはくっつけの繰り返しだった。（アホである）
今思えば、こうした悲しくも辛い体験が、カブトムシへの思いをより一層強くしたといえよう。
